やまのてのブログ

酒を飲んだら飲まれちゃうからなんとか飲まずに過ごしたい。

【読了】妻たちの思秋期

先日読んだ『酒飲みの社会学』(清水新二著)で紹介されていた『妻たちの思秋期』(斎
藤茂男著、講談社+α文庫)を読みました。
【読了】酒飲みの社会学 - やまのてのブログ


本書(の前半「妻たちの思秋期」)は専業主婦でアルコール依存症に陥った女性6名を紹介するルポルタージュなのですが、悲しく、壮絶です。
会社にのみ生き、自身の出世街道を驀進する夫の後ろに、影をひそるようにして自身の存在意義に疑問を抱く妻たちの苦悩ややるせなさを克明に描き出しています。


アルコール依存症に陥ってしまった妻たちは、「なぜ」アルコール依存症に陥ったのか。
答えは「自分の存在意義に対する疑義」からではないかと思います。
良妻賢母が理想とされ、本来と違う自分を演じながら、そこに生じるギャップに苦しみ、考えることをやめたくてしょうがなかったのだという論は、私自身、わからないとは決して言えません。
なぜなら、思考を止めることについて、酒ほどちょうどいいものはないと思われるからです。
(少なくとも私には、時間的、費用的、手間的、社会的、いずれの意味から考えても、ちょうどいいように思われます。だからこそ、広く酒が飲まれるのではないでしょうか)


だから、この本の目的としては当然酒の飲み方ではなく、その根本を白日のもとに引き出すことにあるのです。
つまり「これでいいのか男と女」という問いですね。


まぁ、いいわけないよね、と本書を読むと思うでしょう。
性別を選んで生まれてこれるわけでもないので、男女の差がそのまま生き方に大きく影響をあたえるのであれば、それは理不尽以外の何物でもないでしょう。
本書の中では女性からの投稿ばかり紹介されていましたが、男性からの投稿などはなかったのかな?というのが少し気になります。
ひょっとしたら「世の中は理不尽だらけではないか」「男だって同じように辛いんだ」という反論が男性からあるかもしれません。
そのような反論については何に対しても反論できていないので無視するのが吉としても、じゃぁお前自分が女だったらどう思うんだ?と聞き返したいところではあります。


空気に近い価値観に疑問を投げかける、素晴らしい良書です。
すっかり大人になるまで出会えていなかった私が言うのも何ですが、ぜひ日本中の男も女も本書を通読した上で自分の生き方を決めていってほしいと思います。
あんまりアルコールとは関係ない感想になってしまいましたが、少なくとも読者がそうした姿勢を持つことによって、本書に出てくる女性たちの体験にも意味があったことになるのではないでしょうか。


参考記事


GRDⅣにて。
根津美術館庭園の石柱。結界か何かなのでしょうか。
根津美術館での写真は、こちら↓

その他のGRDⅣの作例はこちら↓

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